Story 01
エコロジーガーデン
故郷新庄の大切に守りたい風景
私(中村)が大学時代、全国各地の歴史と地域性溢れる民家や町並みの調査を経て、「自分自身の故郷の建物にも貢献できないものか?」と考えるようになりました。
工学院大学大学院を卒業した2009年の夏、私は恩師後藤先生にこの旧蚕糸試験場と旧雪調の写真を持って研究室を訪ねて、「これらの建物が登録文化財に値するかどうか見に来て頂くことは出来ませんか」と相談した後、数週間後に新庄に来て頂くこととなりました。
その当時、産直まゆの郷は常時運営されておりましたが、その他の蚕室は物置状態で一般市民に対してオープンな状況ではありませんでした。
しかしこの頃(2009年以降)から、新庄市が工学院大学と協議を重ね、旧蚕糸試験場活用を進めるべく建物調査、学生による市民向け活用提案、価値付を行い2018年から新たな活用に向けた蚕室3棟の耐震改修工事が始まりました。現在は産直まゆの郷、カフェ、シェアオフィス、イベントスペース、ギャラリー等の複合的機能で日常利用され、地域の憩いの場になっています。また、この間(2013年)ここに現存する建物10棟が国登録有形文化財となりました。
今でこそ、日常利用する市民や月1のマルシェに訪れる人々が増えてきていますが、振り返ると、国の機関としての機能が失われた建物、場を再生していくには多くの人の思いと時間がかかってようやく新しい循環が生まれてきたと感じます。また、蚕糸試験場OBの方やこの場所を保存しようと動かれた市民の方達から話を聞くと、私達が関わる前の保存活動があってこそこの建物達が存続するという運命を切り開いたのだということが分かりました。
この場所は建物のみならず、屋外の樹木を含めた広大なランドスケープにも魅力があります。これからも景観と共に活き活きとした活用、運営に対して市民としても関わっていきたいと思っています。古いものは放っておけば朽ちていきますが、この施設を公民連携で活用出来たことによって「建物は年数が経ってもリノベーションによって蘇り、思い出と共に人がつながり合う場になり得る」ということが体現されたと実感しています。
後藤先生を中心として工学院大学の先生方、現場で汗を流して調査してくださった後輩達、この場所を応援し続けて下さった市役所、市民の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。これからもこの蚕糸試験場跡だけでなく、大切な新庄の原風景を守り活かす活動を続けたいと思います。

